日本の伝統的な料理に欠かせない『出汁』。
いろいろな出汁があり、いろいろな出汁を取る方法があり、地域によって、料理法によっても使い分ける。
僕らも生活の中でいろいろな出汁を使う。
ここ向津具半島のある中国地方、特に山陰側では『アゴ(トビウオ)』、『いりこ』といったものが代表的な出汁文化がある。
『郷に入っては郷に従え』の言葉通り、僕らも野菜出汁に加えてそれらの出汁を使う。(安い、美味しい、フードマイレージも低い。)
しかし、ここぞという時に使うのが、、実は『かつお節出汁』。
それも、昔ながらの漁法、製法を大事にして造られた『本物のかつお節』。
(ここでかつお節小話。笑)
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戦後、高度経済成長と共に『かつお節』も大量生産、大量消費の流れに組み込まれていく。
特に『一本釣の鰹』を使ったかつお節は少数派となり、
かつ、『伝統技術で造られるかつお節』の割合は全生産量の2%程にまで落ちる。
そして、
その2%のかつお節に使われる鰹は現在、『巻き網漁の鰹』が主流。
巻き網漁で捕獲された価格の安い鰹を使い、
合理化・効率化を追求したかつお節には、本来のおいしさを見出すことは非常に難しい。
巻き網漁で捕った鰹は網の中で暴れて苦しんだ結果、体が高温になり肉が劣化して乳酸が出る。
だからその鰹を使って作った出汁も、酸味と臭みのあるものになる。
約1,500年と長い歴史のあるかつお節だが、
この数十年で伝統ある漁法と製法は消えつつある。
かつお節本来の味わい、出汁を取ったときの旨味、香りなど、
『一本釣のかつお節』で、かつ『伝統技術で造られるかつお節』。そして『削りたて』にかなうものはない。
この日は来客があったので、朝から皆でかつお節を削り、出汁をとり、
おすましとおかかおむすびの朝食。
こういうシンプルな料理にすると、もろに分かるのが素材の良し悪し。
その点でこのかつお節はまったく心配いらないと思ってる。
誰が料理しても変わらず旨いものができるといっても言い過ぎでない。
削りたての鰹節は甘みがあり、出汁は臭さもえぐみも
全くなく、昆布出汁とはまた別の上品な風味。
『素材を超える加工や料理方法はない』とこの鰹節を扱う問屋さんがいつも言ってましたが、
このかつお節を削るとそれがわかる。
ぼくらが都内のおむすび屋で働いていた頃も、この『一本釣のかつお節』で、かつ『伝統技術で造られるかつお節』を応援し使っていました。
『買い支える』という言葉がありますが、
まさにこのかつお節を使うということは、日本の伝統的な出汁の文化、食の文化を、消費者という立場で買い支えることでもあります。
田舎に来て自給的な暮らしをし始めてからは、自分たちで食べるものはなるべく自分たちで、がキーワードですが、
このかつお節は、
今後も変わらず応援していきたい僕らの豊かな食文化の一つ。
これからもこのかつお節を削る音を絶やすことなく、暮らしを楽しんでいきたいものです。
*このかつお節について詳しくは、かつお節問屋『タイコウ』さんまでお問い合わせください。
かつお節問屋タイコウ:http://www.taikoban.info/index.html